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1 心不全診療ガイドライン 2 SGLT2阻害薬と心不全 3 新規のミネラルコルチコイド受
    容体拮抗薬エサキセレノン(ミネ
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4 頻脈性不整脈に対するカテーテ
    ルアブレーションの長期予後効果
5 新規の高脂血症治療薬「ペマフ
    ィブラート(パルモディア®)」
6 不整脈非薬物治療の最新トピッ
    クス
7 心不全の新しいトピックスのま
    とめ
8 MASTER-DAPT試験と
    STOPDAPT2-ACS試験

ここは臨床に役立つ情報を提供していくページです。是非先生方でお互いに情報提供をしていただけますと幸いです。 (MMWIN事務局)


第8回はMASTER-DAPT試験とSTOPDAPT2-ACS試験についてです。
2022.2.3
    

MASTER-DAPT試験とSTOPDAPT2-ACS試験


 アスピリンとチエノピリジン系抗血小板薬による抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)はステント血栓症の予防に有効であり、冠動脈ステント留置後の標準療法となっています。一方、長期間DAPTは出血リスクの増大と死亡率の上昇に関連することから、薬剤溶出ステント(DES)留置後の至適DAPT継続期間について議論が続いてきました。昨年の欧州心臓病学会(ESC2021)で発表された2つの重要なDAPT継続期間に関する臨床研究についてご紹介いたします。

 まず一つ目はMASTER-DAPT試験(N Engl J Med. 2021;385:1643-1655.)です。高出血リスクの要因(経口抗凝固薬の使用、75歳以上、貧血など)が1つ以上ある出血リスクの高い(high bleeding risk:HBR)患者をDES留置から1カ月後、短縮DAPT群(直ちに抗血小板薬を1剤にして試験終了まで継続)、または標準DAPT群(DES留置から最短6カ月後、経口抗凝固薬併用症例では最短3カ月後までDAPTを行い、以降は1剤にして継続)に割り付け、1年間追跡しました。
図1 主要評価項目である正味の有害事象(総死亡+心筋梗塞+脳卒中+大出血)は短縮DAPT群7.5%、標準DAPT群7.7%と両群で変わらず(図)、出血事象は短縮DAPT群6.5%に対し標準DAPT群9.4%と、標準DAPT群で有意に多い結果でした。以上から、HBR症例におけるDES留置後の短縮DAPTは標準DAPT に臨床成績で劣らないことが示されました。



 二つ目はSTOPDAPT2-ACS試験になります。ガイドライン上、ACSで冠動脈ステントを留置した場合、3~12カ月間のDAPTが推奨されています。京都大学のグループは血栓リスクの高いACS症例を、DES留置から1カ月間のDAPT後にクロピドグレル(75mg/日)のみとする「1カ月DAPT群」、もしくは1カ月間のDAPT後もアスピリンとクロピドグレルによるDAPTを計12カ月間継続する「12カ月DAPT群」に無作為に割り付け、12カ月後の心血管イベント(心血管死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中)と出血イベント(TIMI基準による大出血および小出血)の複合を検討しました。複合イベントは、1カ月DAPT群3.20%、12カ月DAPT群2.83%に発生し、1カ月DAPT群のハザード比は1.14(95%信頼区間:0.80-1.62)となり、95%信頼区間の上限があらかじめ定めた非劣性のマージン1.5を超えたため、1カ月DAPT群の12カ月DAPTに対する非劣性を示すことはできませんでした(非劣性のP=0.06)。特に1カ月DAPT群の心筋梗塞発症リスクは12カ月DAPT群の約2倍になっていました。ACS症例におけるDAPT期間は1か月では短いと考えられ、ACS患者のステント留置後DAPT継続期間についてはさらなる検討が必要であると考えられます。
 高齢化が急速に進む我が国におけるDES留置後抗血栓療法では、常にHBR患者への配慮が求められます。上記の研究結果等を踏まえ、個々の患者における出血リスクと血栓リスクを適切に評価しリスクに基づく層別化を行い、症例ごとの至適なDAPT継続期間を選択することが重要であると思われます。

(文責:東北大学病院 循環器内科 高橋 潤 先生)

(東北大学病院循環器内科 広報誌 HEART59号より改編させて頂きました。オリジナルはこちら