医療関係者の方

TOPICS
1 心不全診療ガイドライン 2 SGLT2阻害薬と心不全 3 新規のミネラルコルチコイド受
    容体拮抗薬エサキセレノン(ミネ
    ブロⓇ)
4 頻脈性不整脈に対するカテーテ
    ルアブレーションの長期予後効果
5 新規の高脂血症治療薬「ペマフ
    ィブラート(パルモディア®)」
6 不整脈非薬物治療の最新トピッ
    クス
7 心不全の新しいトピックスのま
    とめ
8 MASTER-DAPT試験と
    STOPDAPT2-ACS試験
9 経皮的僧帽弁接合不全症修復デ
    バイス「マイトラクリップ®
    (MitraClip®)」
10 肺高血圧症の新しいトピック
    スのまとめ

ここは臨床に役立つ情報を提供していくページです。是非先生方でお互いに情報提供をしていただけますと幸いです。 (MMWIN事務局)


第2回はSGLT2阻害薬と心不全についてです。 2018.8.14

SGLT2阻害薬と心不全


 SGLT2阻害薬は、腎近位尿細管における尿糖の再吸収を阻害し、尿糖排泄を促進することによって血糖降下作を有する薬剤です。我が国においては2014年より使用可能となり、これまでに2型糖尿病治療に対する有効性に加え、心血管疾患に対する効果に関しても、世界中から多くの基礎的・臨床的研究の結果が報告されています。

 2015年に発表されたEMPA-REG OUTCOME試験(N Engl J Med. 2015;373:2117-28)は、日本を含む42か国590施設における、7,020例の心血管疾患合併2型糖尿病患者を対象としたプラセボ対照試験です。本研究においてエンパグリフロジンは、複合心血管イベント(心血管死,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中)に加え、心不全入院発生率をも有意に減少させました(P<0.002) (図)。 また、2017年に発表されたCANVAS Program試験(N Engl J Med. 2017;377:644-57)においても、複合心血管イベント抑制,心不全入院抑制,腎合併症進行の抑制について、カナグリフロジンの優位性が証明されました(図)。さらに、2018年に発表されたCVD-REAL 試験(J Am Coll Cardiol. 2018;71:2497-506)およびCVD-REAL2試験(J Am Coll Cardiol. 2018;71:2628-39)においては、SGLT2阻害薬とその他の2型糖尿病治療薬による糖尿病治療を比較し、心血管アウトカムに関するSGLT2阻害薬の有益性がリアルワールドにおいて示されました。これらの大規模試験の結果はいずれも、SGLT2阻害薬による心不全発生リスクの低下と死亡率の減少を示し、心不全診療におけるSGLT2阻害薬の有用性と、そのクラスエフェクトを示す結果になりました。

 現在、ダパグリフロジンに関する大規模臨床試験(DECLARE試験、DAPA-HF試験、DAPA-CKD試験)が進行中であり、特にDAPA-HF試験では2型糖尿病合併の有無に関わらず、慢性心不全の管理におけるダパグリフロジンの効果を明らかにすることを目的としています。また、エンパグリフロジンに関しては、現在進行中のEMPEROR HFプログラムにおいて、駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)患者で安全性と有効性を評価するEMPEROR HF-Preserved試験を含み、SGLT2阻害薬がHFpEFに対しても有効性を示すか否かが注目されています。新薬に関する新たなエビデンスの蓄積に伴い、今後ますます心不全治療が変わっていくことが予想されます。

(文責:東北大学病院 循環器内科 菊地順裕先生、杉村宏一郎先生(循環グループ))



(東北大学病院循環器内科 広報誌 HEART49号より改編させて頂きました。オリジナルはこちら