医療関係者の方

TOPICS
1 心不全診療ガイドライン 2 SGLT2阻害薬と心不全 3 新規のミネラルコルチコイド受
    容体拮抗薬エサキセレノン(ミネ
    ブロⓇ)
4 頻脈性不整脈に対するカテーテ
    ルアブレーションの長期予後効果
5 新規の高脂血症治療薬「ペマフ
    ィブラート(パルモディア®)」
6 不整脈非薬物治療の最新トピッ
    クス

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   いただけますと幸いです。 (MMWIN事務局)

第6回目は不整脈非薬物治療の最新トピックスについてです。
2021.7.9
    

不整脈非薬物治療の最新トピックス
~2021年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版不整脈非薬物治療から~


「2021 年日本循環器学会(JCS)/ 日本不整脈心電学会(JHRS)ガイドラインフォーカスアップデート版不整脈非薬物治療」が発表されました。作成委員として携わりましたので、いくつかの項目につきまして、要点をご紹介させて頂きます。

① リードレスペースメーカ

 経静脈ペースメーカの合併症の多くはリード、あるいは皮下ポケットに関連し、その発症率はそれぞれ植込み後5年で10%程度と報告されています。この問題を解決すべく、リードとジェネレーター(本体)が一体化したリードレスペースメーカが開発されました。現状、わが国ではVVIのみ
(MicraTM:図1)が保険承認されています。一定の条件を満たせば、または3テスラのMRI撮像が可能です。その適応としては、静脈アクセス温存の必要性、静脈閉塞、狭窄などがある有症候性徐脈性心房細動(AF)が推奨クラスI適応となっています。また、経静脈ペースメーカの植込みが躊躇される場合、AFではない徐脈性患者においてもその適応が考慮されます(推奨クラスⅡa)。一方、洞調律中の房室ブロックや洞不全症候群(SSS)に対してはDDD が推奨さています。注意点としては、植込み時の心筋損傷(心嚢液貯留など)が約1%に認められ、うち15%に外科的修復が必要と報告されています。その危険因子として女性、高齢(≧85歳)、慢性肺疾患などの肺疾患、BMI<20kg/m2、うっ血性心不全、ステロイドの使用などが示されていますので、超高齢者での適応決定は慎重に行うべきと考えます。間もなく加速度センサーを利用したVDDペーシングモードが可能なリードレスペースメーカが使用可能になる予定です。

図1_01 図1_02
図1 Medtronic社提供

② 刺激伝導系ペーシング

 長期間の右室ペーシングの結果、左室収縮機能(LVEF)低下や心拡大を示す患者がいます。これは、医原性左脚ブロックによる左室非同期性収縮が原因と考えられています。近年、刺激伝導系のペーシングを目的とした新たなリードやデリバリーシステムが開発され、刺激伝導系のヒス束ペーシングが行われるようになってきています(図2)。右室ペーシングとヒス束ペーシングの効果を比較したランダム化試験では、ヒス束ペーシングでLVEFが有意に改善したことが報告され、特に心機能が軽度低下した症例でのLVEFの改善がメタ解析にても確認されました。現状、ペースメーカ適応の房室伝導障害患者で、高頻度の心室ペーシングが予測され、かつ中等度の左室収縮機能低下(LVEF36~50%)を認める場合は、通常の右室ペーシングではなくヒス束ペーシングの適応となります(推奨クラスⅡa)。また、心臓再同期療法(CRT)が適応となる重症心不全患者において、CRTの代替ペーシングとなるかについて、現在ランダム化試験も進んでいます。ヒス束ペーシングに関して、一部の患者ではペーシング閾値が高くなることや左脚ブロック患者での左脚の捕捉が困難な場合が報告されており、近年、ヒス束より遠位の心室中隔左室側にペーシングリードを埋没し、左脚ペーシングを行う方法が試みられていますが、長期の成績については未だ不明です。

図2_01 図2_02 図2_03
図2 His束ペーシングでの12誘導心電図と胸部

③ 心房細動カテーテルアブレーション

症候性の心房細動(AF)患者におけるカテーテルアブレーション治療は、その有効性および安全性から確立された治療法と言えます。近年、心不全を合併するAF患者へのカテーテルアブレーションに関する6つのランダム化試験 のメタ解析も報告され、カテーテルアブレーションを行うことで、全死亡率減少、心不全入院減少、左室収縮機能(LVEF)の上昇、QOLの向上などが有意に改善することが判明しています。その結果、「低心機能を伴う心不全(HFrEF)を有するAF 患者の一部において、
死亡率や入院率を低下させるためにカテーテルアブレーション治療を考慮する」(推奨クラスⅡa)と明記されました。また海外のガイドラインにおいては、AFなどの頻拍依存性心筋症による心不全が強く疑われる場合には、積極的にカテーテルアブレーションを行うことが勧められています(推奨クラスⅠ)。AFのアブレーション手技に関しては、手技時間と安全性を重視したバルーンアブレーションが急速に普及しています(図3)。持続期間6ヵ月未満の症候性AF症例を対象にクライオバルーンアブレーションを行ったSTOP PERSISTENT AF研究の結果から、持続性AFに対するクライオバルーンアブレーションの保険償還が2020年に認められました。80歳を超える超高齢心房細動患者でもクライオバルーンアブレーションが安全に行えることが本邦から報告されており、バルーンアブレーションがますます普及していくものと考えられます。

図3_01
図3 右前斜位
(文責:東北大学病院 循環器内科 野田 崇 先生)

(東北大学病院循環器内科 広報誌 HEART57号より改編させていただきました。オリジナルはこちら