医療関係者の方

TOPICS
1 心不全診療ガイドライン 2 SGLT2阻害薬と心不全 3 新規のミネラルコルチコイド受
    容体拮抗薬エサキセレノン(ミネ
    ブロⓇ)
4 頻脈性不整脈に対するカテーテ
    ルアブレーションの長期予後効果
5 新規の高脂血症治療薬「ペマフ
    ィブラート(パルモディア®)」
6 不整脈非薬物治療の最新トピッ
    クス
7 心不全の新しいトピックスのま
    とめ

ここは臨床に役立つ情報を提供していくページです。是非先生方でお互いに情報提供をしていただけますと幸いです。 (MMWIN事務局)


第7回は心不全の新しいトピックスのまとめについてです。
2021.10.20
    

心不全の新しいトピックスのまとめ


 心不全領域では最近、サクビトリルバルサルタンやイバブラジン、SGLT-2阻害剤などの薬物治療の進歩や左室駆出率が保持された心不全の疾患概念の提唱、緩和ケアの導入、補助循環用ポンプカテーテル(インペラ)などの非薬物治療における新しい選択肢、Destination therapyの保険診療の承認などダイナミックに診療・疾患概念が変化してきています。このように大きく診療が変わったため、新たに検討すべき課題も多く出現しております。本年の日本循環器学会の心不全のフォーカス・アップデート版、ESCからの心不全ガイドラインや新規に保険診療追加となった下記の3点について紹介させて頂きます。

1.ARNI(サクビトリルバルサルタン)

 サクビトリルバルサルタンはネプリライシン(NEP)阻害薬のプロドラッグであるサクビトリルとARBのバルサルタンを1対1に含有し、経口摂取後サクビトリルは活性体(サクビトリラート)に速やかに変化します。サクビトリルが阻害するNEPはナトリウム利尿ペプチド等を分解するエンドペプチダーゼで、図に示した通り、3種のナトリウム利尿ペプチドを特定部位で切断するため、主としてARNIの投与により内因性のANP・BNPの増強効果が期待されます。その効果は海外で実施された臨床試験の通りですが(PARADIGM-HF,NEngl J Med 2014)、これらの知見を経てJCSフォーカスアップデート版では標準的な心不全治療を受けている有症状のEFが低下した心不全患者(HFrEF)に対してACE阻害剤もしくはARBからの切り替えについてクラス1の推奨度が与えられております。
 私自身も前任地ではナトリウム利尿ペプチドに関連した幾つかの研究を実施してきましたので、引き続きこの領域での新たなエビデンス創出に取り組んで参ります。


図1

2.SGLT2阻害剤

 糖尿病合併の有無とは無関係に,SGLT2阻害薬ダパグリフロジンがHFrEF患者の心不全イベントを抑制することが示された(DAPA-HF試験)のはご存知の通りですが、さらにEFの保持された心不全(HFpEF)患者でもSGLT2阻害剤エンパグリフロジンの心血管死亡・心不全入院のリスク軽減効果が示されました(EMPEROR-Preserved,N Engl J Med 2021)。

3.心不全領域の解決すべき課題

この他、イバブラジンや可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤であるベルイシグアートの有効性がRCTにより示され、HFrEFに対する薬物治療は近年、劇的に進歩し、薬物治療の選択肢はさらに広がることになりました。しかし一方で、どの薬剤を優先すべきか、どの薬剤の組み合わせが良いのか?、あるいは全ての薬剤を早朝に導入すべきか?、さらに細かい点では薬剤のup-titrationのスピードやこれらの新規の薬剤の導入のタイミングなど新たな多くの未解決な点が浮上することにもなりました。また増加の一途にあるご高齢の心不全患者さんにこれらの上記のRCTの結果をそのまま適応可能か?、心不全診療の地域連携のあり方や終末期を迎えつつある患者さんへの緩和ケアの導入方法やアドバンスケアプラニングの導入時期や臨床現場への実装方法など、令和時代の心不全診療における新たな課題が生じつつあります(右図)。
 患者さん、お一人お一人に最適な治療を提供できるようにベストを尽くす一方で、判断材料となるデータの構築にも取り組んで参りたいと存じます。




図2
(文責:東北大学病院 循環器内科 高濱 博幸 先生)

(東北大学病院循環器内科 広報誌 HEART58号より改編させて頂きました。オリジナルはこちら